白枝移動都市
白枝自治移動都市の前身は、新人類連邦政府によって近隣星域への遠征を目的に編成された「白枝艦隊」である。
この艦隊は数百年にわたって存在し続け、新人類連邦の版図を、かつての数倍にまで押し広げた。
艦隊司令官の地位は世襲制ではなかった。だが、その任に就く者は、しばしばカートメンロー家の人間であった。そのため、そこに何らかの裏があるのではないかと疑う声も存在したが、歴代のカートメンロー家出身の司令官たちは、そのような噂を黙らせるだけの実力を示してきた。ゆえに、艦隊内部で彼らに反対する士官は決して多くなかった。
連邦に多大な貢献を果たした後、白枝艦隊第六代司令官――楊威・カートメンローは退役した。そしてその後、「連邦の栄光」とまで称された白枝艦隊の司令官に就く者は、二度と現れなかった。
なぜなら、白枝艦隊そのものが、白枝自治移動都市へと姿を変えたからである。
楊威は連邦政府に対し、艦隊を解散し、一部の艦船のみを保有したまま、自力で移動可能な艦船都市へと再編する申請を行った。同時に、連邦特別自治領としての自治権を求めた。
当時の白枝艦隊は、それ単独で新人類連邦におけるもう一つの強大な勢力となりうるほどの力を持っていた。そうした可能性を警戒していた連邦政府にとって、楊威の申し出は、ほとんど臣従に等しいものだった。政府はただちに、その申請を認めた。
白枝艦隊が保有していた約八百隻の先進戦艦のうち、残されたのは三十数隻に過ぎなかった。その他の艦船はすべて軍の各部隊へと編入され、連邦軍の戦力は一挙に数段階引き上げられることとなった。その代償は、ただ一つの自治権。カートメンロー家をこの都市の統治者として認めることだけであった。まして、その統治者は連邦に忠誠を尽くしてきた老将である。
残された艦船のうち、五隻は楊威の要望に従い、大型殖民艦へと改装され、都市の中核を担うことになった。その他の艦船は、都市の自衛艦として武装を保ったまま残された。
こうして誕生した白枝自治移動都市は、一つの誉れある名で呼ばれるようになる。
――「艦船の上に築かれた都市」。
白枝は、いつでも位置を移すことができるという利点を活かし、連邦各地の省市惑星と交易を行い、資源に富む宙域へ移動して採掘を行い、時には未知の星域へ赴いて開拓と探索に乗り出した。連邦が白枝に特殊な補給体系を提供したことは、事実上、この行動を黙認するものでもあった。
やがて白枝都市は、もう一つの名で呼ばれるようになる。
――「開拓の都」。
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<データ解凍中……>
白枝旗艦――地球連邦開拓者艦隊・副旗艦級。