祈理教会
祈理教会は、新人類連邦の影の下で活動する秘密組織である。
対外的には一定の宗教色を帯びているものの、その内実は、厳密な組織構造と明確な階級制度を持つ、研究を中核とした実体である。単なる独立した民間組織ではなく、連邦軍内部の「抗撃派」の中でも最も急進的な勢力によって主導される、宇宙の根本法則「理律」の研究と干渉を専門とする直属機関である。
教会の究極の目的は、「理律」という神にも等しい権能を完全に解析し、複製し、最終的には人類の手で制御可能な技術へと転化することにある。そのためならば、彼らはあらゆる禁忌、さらには非人道的な手段を用いることも厭わない。
組織構造は、典型的な「研究」と「実行」の二頭体制を取っている。
その中核を成すのは、複数の大型移動空艦によって構成された秘密研究施設群である。たとえば、主人公・束を拘束し、改造した「第三研究所――輪転の間」は、その代表例であり、これらの施設は生体実験と禁忌技術開発の心臓部となっている。
研究を円滑に進め、障害を排除するために、教会は「真理の剣」と呼ばれる精鋭武装実行部隊を保有している。その構成員はいずれも、特殊な選抜と訓練を受けた強力な魔法使いである。
教会内部の階級は極めて厳格であり、高位の管理者は「主教」と呼ばれる。彼らは大きな権限を持ち、膨大な資源を動かすことができる。
教会における最も重要な技術資産は、「偽理」と呼ばれる恐るべき力である。それは「理律」を不完全に模倣し、あるいは歪めて応用した産物であると見られており、使用者に、局所領域において物理法則を書き換えるかのような、異様で強大な能力を発現させる。
祈理教会は、連邦の政治構造の中でも、極めて敏感かつ危険な位置に存在している。
「抗撃派」が握る最も鋭く、そして最も汚れた刃として、教会は連邦政府が表立って認めることのできない任務を数多く遂行している。旧人類の生存者の捜索・拘束や、「理律」関連現象への武力介入は、その代表的な例である。
その行動様式は隠密で、残酷であり、徹底して秘匿されている。連邦上層部において、教会は必要な「悪」と見なされる一方、その制御不能に陥る危険性から、「保守派」をはじめとする他勢力から強い敵意と警戒を向けられている。
現在の物語において、祈理教会は主人公たちが直面する、最も直接的かつ持続的な脅威である。
それは主人公・束にとって、過去五年間にわたる悪夢の源であり、教会は今なお、自らの最高研究成果「空理之典」を宿した“実験体”である彼を執拗に回収しようとしている。
同時に彼らは、「最後の尋理者」としての遥が示す潜在能力にも強い研究関心を抱いている。彼女を、「理律」の謎を解き明かすためのもう一つの重要な鍵と見なしているのである。
シロヴィアは現在、「主教」という高位の身分で教会中枢に潜伏している。彼の目的は、この組織を瓦解させることではない。むしろ祈理教会を巨大な資源庫と見なし、その設備、データ、権限を利用して、「空理之典」および「世界の理」に関する研究を密かに進めている。